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リアルの辛さと希望に感動する
バガボンドなども描いている井上雄彦先生の作品である「リアル」。
これは1年に一度しか発売されない漫画で、まだ完結していません。
もう14巻目になっていますが、これがとにかく深い物語なのです。
リアルは障害に立ち向かう男たちのお話
骨肉腫によって右膝から下を失った戸川清春を主人公に、障害を持ちながら生きていく人間の困難や苦しみ、そして希望を描いている作品です。
もう最初の1巻から、その世界観に引き込まれてしまうと思います。
大好きだった陸上競技ができなくなってしまった清春、大好きだったバスケをできずに素行が荒れた結果一人の女性を下半身不随にしてしまった野宮、自分はランクの高い人間だと図に乗っていたら事故で下半身の自由を失った高橋…みんなが大切だった何かを失ってしまった人たちです。
そしてもう一度、大切なものがいったいなんだったのか、これから大切にしていくものは何なのか…葛藤しながらも進んでいく姿に、感動してしまいます。
リアルの舞台は車いすバスケの世界
清春は、骨肉腫によって右足を奪われたあと、ふさぎ込んでしまい引きこもりになります。
しかし、そんな清春を救ってくれるのが、一生治ることなく進行していく筋ジストロフィーという病気に立ち向かっているヤマです。
彼が本当にいろいろなことを清春に教えてくれ、そして勝田虎の導きもあり、清春は車いすバスケの世界へとのめりこんでいきます。
自分自身の中だけで考えていたことが、車いすバスケに傾倒する先輩たちに出会ってどんどん広がっていきます。
もちろん、価値観が大きくなっていく一方で、苦悩、葛藤、過去との決別、そして希望…本当にいろいろな感情が彼らにのしかかってくるのですが、登場人物一人一人が本当にいいやつで…みんなが主人公級です。
リアルの主人公以外の見どころ
清春の進んでいく道はもちろんですが、野宮と高橋のストーリーも相当泣けます。
野宮は風貌はかなりの強面ですが、明るい性格でバスケットボールが大好きな奴です。
後輩からも慕われるような性格でした。
そんな彼が、チームメイトの高橋と対立して素行が荒れ、偶然声をかけてバイクに乗せた山下夏美を交通事故に巻き込んで下半身不随にしてしまう…これってどんな気持ちでしょうね。
計り知れない罪悪感、どうやったら償えるのか、どうやってこれから生きていったらいいのか…そこからどう這い上がり、どんな未来を夢見て生きていくのか。
野宮の人生をぜひ見てほしいですね。
そして高橋も、共感できるところがあるのではないかと思います。
勉強もバスケも容姿もすべてがんばらないで良い成績を収めてきた高橋。
自分はなんでもそつなくできる、Aランクの人間だと思って生きてきた彼は、悪いことも平気でできてしまう残念な奴です。
そんな彼が下半身不随となり、もう一度自分と、家族と向き合っていく。
その過程で出会う自分よりランクが下だと思っていた人たちの強さ、努力をするということの本当の意味。
読めば読むほど、感動できると思います。
題材は暗いけれど、深く考えさせられるこの作品。
ぜひ一度読んでみてください。