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タブー視しないで「死」について考える
私が紹介させていただくのは、三原ミツカズさんの「死化粧師」です。
タイトルの通り、死を1つのテーマとして取り扱う漫画で、ホラーマンガや反社会的なものだと勘違いされがちですが、タブー視している人にこそぜひ読んでほしい作品です。
死化粧師を読み始めたきっかけ
そもそもこの作品との出会いは、単純に作者さんの絵が好きで新旧問わず買い漁っていた事からです。
ゴスロリファッションやパンクファッションを取り入れた、お洒落で独特のタッチが好きで「あ、まだこれ持ってないや」と手にとったことが出会いでした。
男性主人公、「死」という言葉がつくタイトル、コミックの表紙の一種不安になる色使いにドキドキして、1巻を買ってすぐに読んでしまいました。
聞き慣れない『死化粧師』とは
そもそも表題の『死化粧師』が何を指すのかが解っていなかったのですが、第一話を読んで理解できました。
主人公の青年はエンバーマーで、日本では馴染みの薄いエンバーミングという特殊な技術
で、故人との最期のお別れのお手伝いをする仕事のお話だったんです。
事故や事件で四肢が欠損したり、酷い怪我や火傷、または感染する病気を持っている等で、お別れの瞬間すら遺族と満足な時間を取れなかったり、お顔さえ見れなかったり…そんな遺族と御本人の為にエンバーミング処置を施し、悔いの残らないようにする為の時間を作ってくれる。
それが、エンバーマー(死化粧師)。
涙無しに読めない、無力さとの戦い
主人公の青年とヒロインを軸に話は進んでいきますが、勿論その話数分だけ人の生死に関わる話があります。
エンバーミングはとても素晴らしく、高度な技術ではありますが、万能ではなく、時に無力さに悩むシーンも出てきます。
消炭同然まで黒焦げになってしまった子供のお話、『遺体に手を加える』『ミイラでも作るの!?』と遺族の理解が得られず、満足に処置ができなかったお話等が出てきます。
主人公は一流の腕を持っていますが、だからといって遺された人達の悲しみまで修復出来るわけではないやるせなさに涙が出てきます。
トラウマを抱える主人公と素直になれないヒロイン
傍から見れば深く愛し合ってるくせに進展しない恋愛のシーンではじれったさに少しだけイライラするかも知れません。
ただ、この焦れったさも『死』にまつわる重いテーマと調和して、読後感をマイルドにしてくれます。
何よりこのヒロイン、すごく感情移入できちゃうんです。
恋に悩んだ乙女ならきっと、るある!と思えるはずです。
実は身近なエンバーミング
ここまで読んでいただいても、身近な方が亡くなった事が無い方には、なんだか遠いものだと思っていることと思います。
しかし、実は私達の身近な所でエンバーマーが活躍していたんです。
エンバーマーは大きな災害や事故が起こった際に出動することを法律で定められており、記憶に新しい東日本大震災の際にも活動していたそうです。
私自身、阪神・淡路大震災を経験し、身近に家族友人とロクにお別れも出来ないまま見送ったという人がいたからこそ、思い入れが強いのかもしれませんが、エンバーマーという職業を知るいいきっかけになったこの漫画は、一度でいいから読んで欲しいと思っています。
終わりに
遺された人達は何を思うのでしょうか。
『葬式なんて無駄だ』という人もいれば、『最期に顔を見てきちんとお別れを』と考える人もいます。
『死』は恐ろしく、そして触れてはいけない部分のように扱われがちですが、遅いほうがいいとは言えいつかは誰もが通る道です。
悪しきものとして蓋をし、見ない振りをし、批判するのではなくて、こういった手に取りやすいマンガで少しだけ、考えてみるのもいいかもしれません。
読んでいただけた方が、何か心に響くものを感じていただけたら幸いです。