人が恋愛するとキラキラしたものだけではなく、必ずどす黒いドロドロしたものがあるかと思います。
それを人は恥ずかしくて隠そうとしますが、コレを読むとすごく感心できると思います。
その漫画の名前は「妄想君のふたりあそび」といい、作者は端丘(ハタオカ)先生になります。
ちなみにジャンルはボーイズラブという一部の方から絶大な人気がある一方苦手意識がある方も多いと思いますが、読む機会があればぜひ一度は手にしてもらいたいと思います。
まず簡単にこの作品のストーリーを紹介したいと思います。
まず主人公、一文字昴(いちもんじ すばる)は幼少期から王子様に憧れるドリーミーな思考の持ち主です。
いつか自分にも王子様が迎えに来てくれると信じて27年が過ぎていきます。
本作品はそこから始まっていきます。
もともと昴は過去に同性愛者ということが理由で傷つくことが多かったため、普通の男性では受け入れてもらえないという思考になっています。
そんなある日、昴のバイト先のコンビニに想像していた二宮聖(にのみや ひじり)くんがお客さんとして買い物に来ます。
そこから昴はどんどんどんどん聖くんを自分の理想とする王子様に妄想していきます。
正直昴は聖くんがコンビニでお願いした宅急便の控えをみて近くのアパートに引っ越したり、お給料を王子様(聖くん)を撮影するようのカメラを買ったりと、行動しますが直接話しかけたり仲良くなろうとは思っていません。
もし仲良くなって実は自分が妄想する人物と違っていたら?もう王子様はいない、自分を愛してくれる人はこの世にいないと考えてしまうからです。
そんな昴に転機が訪れます。
なんと聖くんの正体が分かってしまうのです。
ずっと可笑しいと思っていた来店する時間。
妄想の中では社長でしたが、社長が来るにしては不思議な時間。
それなら時間を自由に使えるオーナーだと思っていたら、なんと彼は白いブレザーを着ていたのです。
普段に合わないためシャツ一枚だったので会社員風に見えてましたが、実は高校生だったのです。
聖くんは見た目により勝手に創りあげられることに嫌気をさしています。
見た目に反していちご牛乳や甘いものが好きなことを馬鹿にされ、さらには思ってのと違うなんて言われることが多かったようです。
高校生と分かった時点で一度昴の王子様の妄想遊びは終了するのですが、また二人が寄り添う出来事が起こります。
ストーカーのようにずっとみていた昴は聖くんの歩き方一つで落ち込んでいることが分かります。
もう王子様じゃないと分かったので、ほっておきたいのですが昴は聖くんに話しかけます。
そんな感じでふたりは近づいていくのでラストはぜひとも読んで確認して欲しいと思います。
サラッと作品の紹介させていただきましたが、結構そこだけ読むと昴くんのストーカっぷりや妄想が気味悪く思う人もいるかと思います。
しかしそこを考えて欲しいのです。
本当に気持ち悪いと思えるでしょうか。
誰しもが人を好きになることがあると思いますが、そんなに綺麗な恋愛ばかりでしたかと問うと、はいと返せる人は少ないのではないでしょうか。
それでも納得出来ない人は、こう考えてみてください。
漫画のような青春や恋愛をしたことがありますか?多くの人は憧れるけど、ないと答えるのではないでしょうか。
何が言いたいのかと言うと、ようはこんなストーカーみたいなこと気持ち悪いとか妄想とか気持ち悪いって思うなら、漫画だからと返したいということです。
だって現に少年漫画だって少女漫画だって現実問題あるわけ無いって思っても漫画だからという考えと同じです。
しかしこの漫画の違うところは、ここまでじゃなくても妄想したことありませんか?少しでも好きな人と両思いになったり、大好きな人に振られたりした時にもっとかっこいい人に巡り会えるかもしれない、いつもモテる友人より、自分のことを世界で一番好きと言ってくれる人に出会えるかもしれない、これも同じことだと思います。
多くの漫画に多いのが単純にキラキラした恋愛漫画が多い中、こういった人間の深層に潜む黒い部分を見事に描かれているのが「妄想君のふたりあそび」なのです。
私はこの作品を読んだ時に自分に当てはまることが多くてすごく驚きましたし、今まで苦手と思っていたボーイズラブもありかなって思うことが出来ました。
同性愛者でも、異性が好きでも結局恋愛する過程は同じだったということです。
私はどちらかと言えば昴くんのように妄想したり、ストーカー手前のように好きな人の誕生日や血液型、好きな食べ物、好きな映画など知っては喜んでいました。
でもやっぱりだからっと言って自分から食事に誘ったり、映画に誘うってゆうことはなかったですが、それでも毎日が楽しくて仕方なかったです。
だからこそ昴くんの気持ちが痛いほど伝わってきましたし、昴くんのように自分から楽しいと思えることを壊したくないという気持ちも理解できました。
なにより昴くんは本当に健気なので見習いたくなります。
作中に聖くんが受験で悩み(意外と頭がよくなく、本当に王子様っぽくないのですが)、昴くんに悩みを打ち明けどうしたいのと聞かれて逃げ出したいというと、昴くんが自転車でこの場から連れだしてくれます。
この場と言っても修羅場とかではなく、普通に公園で話している中ですが。
それでも聖くんがずっと悩んで、こうしたいと思っていたことを簡単にやってのけた昴くんは、聖くんにとって王子様に見えたのではないかと思います。
ここから二人の気持ちが近づいたように感じられたので、私はかなりお気に入りのシーンです。
後に聖くんの昴くんのほうが王子様っぽいと言っていますし、本当に何度見返しても感動します。
ちゃんと人間の黒い部分が描かれ、さらに感情も置き去りにせず、読者を独特なこの世界観に引きずりいれてくれるので読んでいて納得するしかありません。
しかしながらどうしてもボーイズラブということもあって、人気になったりましてやアニメになることもありません。
それが酷く悲しくもどかしいのですが、作者の端丘先生が描かれる絵だからいいのかもしれません。
今度の夏にはサイン会を行う予定ですので、やはり根強いファンの人気は強いように思われますが、もっともっと人気になってもらいたいと思います。
最後に読んでみたいと思った方に、ここは注目して欲しいと思うポイントを紹介したいと思います。
物語に集中するとメインの部分しか入ってこないと思いますが、細かな部分も確認してみてください。
すごく細かなところの描き込んでありますし、一つ一つの表情がしっかりと描かれているので注目してみてください。
きっと作者の方がとても楽しい方なんだと思いますが、すごく丁寧に描き込まれていますが、面白い要素もたくさんですし、何より読んでて気持ちが落ち込まないです。
単純にキャラクターが根っからのおバカで明るいのです。
もちろんシリアスな部分はすごく心苦しくなりますが、基本スッキリ爽快です(笑)オバカというよりすごく前向きなのかもしれません。
そういった姿に励まされ楽しい気分にさせてもらいます。
こちらの作者さんは他にもマンガ本を出されていますし、こちらは珍しく暗めな話が多かったように感じられましたが、それでも前向きキャラばかりなので必要以上に暗くなりません。
「妄想君のふたりあそび」が気になり、読んでくださった方は、ぜひとも発売されているもう一つの本も読んで見てください。