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目次

この漫画を知ったきっかけ

大学の江戸文化の講義で、先生が授業のレジュメに杉浦日向子のイラストや漫画を載せていたのがきっかけで、杉浦日向子という漫画家のことを知りました。

後に実家に杉浦先生の「二つ枕」という江戸吉原を描いた短編集があることに気づき、読んでみると浮世絵が漫画になったような画風に驚き、他の作品も読んでみたくなりました。

「百日紅」は浮世絵のような画風ではないので読みやすく、短編連作なのでちょっとした時間に一話ずつでも読めます。

感想

教科書にも載っている葛飾北斎が、とても身近になったような気分になります。

漫画の中の北斎は娘に悪態をついたり、散らかった部屋の中で布団にくるまって絵を描いたり、若いお弟子さんと浮気をしたりとあまり立派な人物ではありません。

だからこそ北斎の人間性が生き生きと描かれていてとても新鮮です。

作者が江戸風俗研究家だったこともあり、作中の江戸の町はとても細やかに描写されています。

物売りや町人が闊歩する江戸の町にタイムスリップした気分になり、引き込まれてしまいます。

sarusuberi

好きなキャラクター

北斎の娘、お栄が好きです。

北斎ほどの有名な父親に臆することなく、反対に噛みついていくような強い女性。

絵の実力も父に劣らず、実際のお栄の浮世絵(画号は葛飾応為です)も幾つも残っています。

しかし外見に自信が持てず、恋愛経験もないので、男女が絡むような絵はどうしても上手く描けません。

いつもは飄々として冷静なお栄が時折見せる物憂げな様子が、読んでいて応援したくなります。

ネタバレ

一番好きな話は、お栄が龍を描く話です。

北斎が描いた龍の絵を反故にしてしまったお栄が、一晩で龍の絵を描きます。

龍が「降りてくる」のを一人待っていると、にわかに強い風が吹いてきます。

翌朝には見事な龍の絵が部屋に広げられいる、という話です。

「百日紅」には他にも、物語の重要な所で強く風が吹くことがあります。

登場人物の心が動いた時に吹き付ける風です。

江戸の空風が読んでいるこちら側にも吹き付けてくるようです。

おすすめポイント

作中には北斎の他にも有名な浮世絵師が多く出てきます。

キャラクターを思い浮かべながら、美術館や博物館、本などで実際の浮世絵を見てみるのも面白いです。

関連情報

2015年にアニメ映画が公開されました。

監督は「カラフル」「河童のクゥと夏休み」などの原恵一監督です。

声優陣には杏、松重豊、濱田岳、高良健吾などの有名俳優が起用されました。