紡木たくさんと言うと、最近になって若干今更感？がありつつも、映画化までされた「ホットロード」が、あまりにも有名ですが、私はホットロードの次に発表された「瞬きもせず」に心惹かれました。
ホットロードが湘南の不良のお話であるのと真逆に、こちら、瞬きもせずは、中国地方は山口県の片田舎の純朴そのものの県立高校に自転車通学する少女、小浜かよ子が主人公。
入学早々、出席番号の近い紺野芳弘と知り合います。
紺野くんは、かよ子のことを中学から知っていて憧れていました。
陸上部に入っていたかよ子が大会で走る姿に惹かれたのです。
二人は純真そのもので口下手で恥ずかしがり屋なので、お互いに好き合ってはいながら誤解が生じたり、勝手に嫌われてしまったと思い込んで落ち込んでしまったり、かと思うと学校で一言でも会話をできただけでも大きな喜びを感じたりと、当時中学生の私から見ても、二人の不器用さに、もどかしさとキュンキュンする気持ちが入ろ交じり、毎月ドキドキしながら連載されていた別冊マーガレットの発売日を首を長くしながら待ったものでした。
かよ子の親友が、みっちゃんといって、紺野くんや紺野くんの親友である輝哉くんとは中学から同じで、とっても友達思いの優しい子。
恋心が成就し合ったかよ子と紺野くんカップルとは違い、ずっと輝哉を想い続けながら、男女の仲を超えた友達という距離感を縮める勇気が持てず、今更輝哉に告白する勇気を持てない、生き方が器用そうに見えながら、その実誰よりも不器用な女の子。
私の周りにも、このみっちゃんの恋を応援する友達は多く、何とか輝哉と結ばれて欲しかったのですが、(中には紡木先生にお願の手紙まで出した子もいました)結局、輝哉が選んだのは、都会から来た水商売をやっている年上の女性。
彼女を追って輝哉は高校を中退して東京に出てしまいます。
最後の最後で輝哉に告白できたみっちゃんでしたが、それは同時に別れを告げていて、涙なくしては読むことができませんでした。
一方、高校をちゃんと卒業してから、主人公のかよ子は東京の短大に、紺野くんも東京の工場に就職。
みっちゃんだけが地元に残りました。
みっちゃんはその後、輝哉のように激しい恋心ではなく穏やかな気持ちでいられる彼ができます。
家族思いのかよ子は、お母さんが倒れたことをきっかけに短大をやめて山口に帰り、翌年地元の短大を受けなおす生活をしていたところ、音信不通になっていた紺野くんも、色々と自分なりにしっかり人生を見つめ、東京での生活に見切りをつけて同じく帰郷し、真っ先にかよ子の元にやって来てくれたのです。
物語はここで終わりますが、このピュアな二人は必ず結婚というゴールを迎えたのだろうなと、きっと読者は皆・・少なくとも私はそう思い胸がホンワカ温かくなりました。
